仮想通貨と信用創造 その2

こんにちは。

クリプトリサーチの平野です。

 

ビットコイン型の仮想通貨は、マイニング競争による貨幣供給に支えられています。

 

つまり、貨幣の発行は承認による報酬という

インセンティブに突き動かされるマイナー次第ということになります。

 

一定額の仮想通貨を作り出すためには

高価な設備や電気代など多大な資源を投入しなければならず、

この資源投入コスト(マイニング費用)は、基本的には仮想通貨の価値とバランスします。

 

つまり、

「仮想通貨の価値」が「マイニング費用」より大きければ、

マイニングに参入するマイナーが増えます。

 

競争者が増えれば、マイニングにおける計算問題の難度が上がり、

計算量が増大するので、やがて「仮想通貨の価値」と「マイニング費用」が同じになります。

 

逆に、「仮想通貨の価値」が「マイニング費用」より小さければ、

マイナーは採算割れとなるのでマイニングから退出し、

結果として「仮想通貨の価値」と「マイニング費用」が同じになります。

 

このように、仮想通貨の価格が先に動き、

マイニング費用が仮想通貨の価格に後追いする仕組みとなっていることが、

価格の不安定性の要因になっています。

 

いずれにしても、新たな貨幣を発行するために、

その価値とほぼ等しい資源を投入するのは資源の無駄といえます。

 

そして、「仮想通貨は中央銀行通貨に置き換われるかどうか」、

という議論も、この経済性という点から現状では到底無理といわざるを得ません。

 

前置きが長くなってしまいましたが、

「経済性」という点から圧倒的に不利な仮想通貨も今後、

「信用創造」という仕組みを導入した新しいタイプの仮想通貨が登場すれば

中央銀行通貨と競争することができます。

 

そこで、まず、貨幣を安定して供給する装置としての

「信用創造」の仕組みの説明に入りたいと思います。

 

「信用創造」は「預金創造」とも呼ばれ、

市中銀行の貸出しと預金の連鎖で預金が創造されます。

 

この信用創造により、当初に中央銀行が直接発行した貨幣の何倍もの預金を作り出し

あたかも貨幣が供給されたかのような効果を持つことから、

中央銀行としては無駄に貨幣を供給することはなく

必要最小限の貨幣を発行すればよい、ということになります。

 

ちなみに、この中央銀行が直接発行する貨幣、

つまり現金は何倍もの預金を作り出す強い力があるという意味で、

「ハイパワード・マネー」と呼ばれます。

 

中央銀行が新たに貨幣(ハイパワード・マネー)をA銀行に100万円供給したとしましょう。

 

A銀行はこの100万円を企業1に貸出し、企業1は取引先の企業2に100万円を支払ったとします。

 

次に、企業2は受け取った100万円のうち10万円は現金として手元に置き、

残り90万円はB銀行に預けるとします。

 

B銀行は預かった90万円のうち

10%にあたる9万円は企業2の支払いに備えて日銀に預け、

残り81万円を企業3に貸し出したとします。

 

なお、市中銀行は預金者の支払いに備えて一定比率(支払準備率)を

日銀に預け入れることが義務付けられています。

 

この制度は「準備預金制度」と呼ばれていますが、

経験的に預金の10分の1あれば十分とされています。

 

続いて、企業3は製品台として81万円を企業4に支払い

企業4は受け取った81万円の10%にあたる8.1万円を手元に置き、

残り72.9万円をC銀行に預金したとします。

 

C銀行は企業4から預かった72.9万円のうち

支払準備率10%の約7.3万円を日銀に預け、

残り65.6万円を企業5に貸し出したとします。

 

ここまでで、最初に日銀が供給した貨幣100万円は

「貸出し→預金→貸出し→・・・」と繰り返して回転しており、

預金が創造されていると考えることができます。

 

上の例で預金の部分を抜き出してみると、

「企業2の90万円」と「企業4の72.9万円万円」がこの預金創造に当たります。

 

つまり、現金は印刷しない限り増えることはありませんが、

「当初の現金100万円+預金90万円+預金72.9万円・・・」と

預金・貸し出しの連鎖によって預金が増えるというわけです。

 

では、最初のハイパワード・マネーに対して預金がどれだけ増えるのかというと、

上の例のように受け取った現金のうち手元に置く現金は

10分の1、預金に回すのは10分の9とすれば、

現金預金比率は1/9で約11%、支払準備率は10%として計算すると、約530万円になります。

 

このように、日銀が新たに貨幣を100万円供給すれば(ハイパワード・マネー)、

預金がそのおよそ5.3倍の約530万円に増えるという「預金創造」、

すなわち「信用創造」の仕組みが法定通貨にはもともと備わっています。

 

その3へ続く。

PAGE TOP