仮想通貨と信用創造 その3

こんにちは。

クリプトリサーチの平野です。

 

法定通貨には、貸出しと預金を繰り返すことにより、

社会に貨幣が供給される「信用創造」という仕組みがあることをお話ししました。

 

この仕組みは、マクロ経済学の「乗数効果」を応用したもので、

政府や民間が投資や支出をしたら、

どれだけ国民所得が増えるかという乗数サイクルが、

信用創造、預金創造にも働くということです。

 

つまり、法定通貨には仮想通貨にはない「預金」という仕組みがあり、

この点で優位に立っているといえます。

 

実際、私たちは日常、円で銀行に預金しています。

 

また、ドル建て預金、豪ドル建て預金など外貨建て預金という選択肢もあります。

 

しかし、ビットコイン建て預金はありません。

 

また、銀行が貸し付ける際に円などの法定通貨が使われますが、

それに対して銀行にはビットコインなどの

仮想通貨による貸し付けの仕組みもありません。

 

ただ、仮想通貨は非常に速いピッチで進化し続けていることから、

「信用創造」型の仮想通貨を創ることは技術的に十分可能です。

 

では、仮想通貨建てで預金や貸付を出来るようにするためには、

どのような道筋を考えればいいのでしょうか?

 

現状では、ビットコインで預金したものの

1年後にはその価値が半減する可能性もあり、

これでは怖くて誰も預金はできません。

 

企業にとっても、価値が不安定なので見積もりと契約の間のタイムラグで

価値が大きく変動する可能性があり、これではとても取引には使えません。

 

したがって、仮想通貨による「信用創造」を実現するためには、

仮想通貨の価値についての安定性が必要不可欠になります。

 

価値が安定すれば、つまり、

1年後の価値が見通せれば「金利」が成立して、仮想通貨建て預金が実現可能となります。

 

ここで、「金利」とは現在と将来の交換取引を行う装置です。

 

現在の購買力と将来の購買力の取引をつなぐものが金利です。

 

具体的に例を挙げてお話しすると、

現在の100万円で買えるものと、

1年後の100万円で買えるものが同じなら、金利はゼロです。

 

銀行に100万円預金しても、

金利ゼロなら1年後の預金額も100万円のままということです。

 

あるいは、すぐにお金が必要という企業の場合、

現在で銀行から100万円借りて、1年後に100万円を返せばいいということです。

 

今度は物価が上昇して、

現在100万円で買えるものと1年後に110万円で買えるものが同じなら、金利は10%になります。

 

銀行に100万円預金すれば、金利10%なので1年後の預金額は110万円になり、

企業が現在で銀行から100万円借りた婆の1年後の返済額が110万円になるということです。

 

このように考えれば、「金利」は「時間価値」であり、

上で述べたように現在の価値を将来の価値に変換するツールであるといえます。

 

一方、仮想通貨は価格の変動が高く

不安定であるために「金利」が成立せず、

そのため仮想通貨を「預金」や「貸付」に使うことができません。

 

したがって

「信用創造」「預金創造」という役割が果たせるようにするためには、

仮想通貨が内蔵する価値の不安定性をどう取り除くか、

という観点からのアプローチが必要です。

 

その4に続く。

 

次回は仮想通貨の仕組みに価値の安定性を導入する方法について触れていきます。

PAGE TOP