仮想通貨とゲームの理論

仮想通貨を経済学の観点から分析しようとすると、

どうしても「ゲームの理論」を扱わざるを得ません。

 

「ゲームの理論」は経済学に必ずといっていいほど登場する理論で、

ハンガリー生まれの数学者フォン・ノイマンが1920年代に

ゼロサム2人ゲームの基本定理を証明したことに始まる数学の一分野です。

 

名前の由来は、お互いに相手に影響を及ぼし合う場で、

自分の利益を追求する行動や戦略が、

本質的に将棋や囲碁などのゲームと同じであるとの認識から

「ゲームの理論」と呼ばれるようになりました。

 

「ゲームの理論」は、社会科学の分野に大きな影響を与えています。

 

たとえば、

伝統的な経済学では消費者や企業がマーケット全体に与える影響力は小さい

という前提を置いて理論を構築しています。

 

しかし、実際のマーケットは、多くの場合、

限られた少数の大企業が支配しながら相互に競争する「寡占」の状態にあります

 

寡占が進んで、2つの企業だけが支配する状態になると「複占」、

さらに1つの企業だけが生産や販売市場を支配している状態が「独占」になります。

 

もちろん、伝統的な経済学も寡占や複占、

独占による価格上昇などを理論化しています。

 

しかし、

実際のマーケットで消費者や企業が経済行動を決定する理論としては、

伝統的な経済理論モデルは重装備過ぎて非実用的で、

判断を必要とする現場ではほとんど活用できません。

 

半面、社会の実態として、

寡占状態にある各企業がマーケットを正しく分析するためには、

競争相手の企業がどのような戦略に出てくるかをある程度予測する必要があります。

 

そのような分析と戦略構築のために使われ始めたのが、「ゲームの理論」です。

 

堅い表現になりますが、「ゲームの理論」とは個人や企業、国家など、

複数の当事者が存在し、それぞれの行動が互いに影響し合う状況下で、

それぞれの効用に基いて各人の行動を予測し、意思決定を導く考え方です。

 

したがって、自分の行動が相手の行動や効用に変化を与える状況でありさえすれば、

いろいろな事柄に応用できます。

 

たとえば、複占となっているマーケットで、

企業Aが値下げすべきかどうかは、企業Bの出方によって変わってきます。

 

あるいは、寡占状態で、

大規模量販店Cが新規出店計画を実施するかどうか判断を迫られているケースでは、

競争相手の大規模量販店Dが同じ地域に出店してくるかどうで

戦略は大きく異なってきます。

 

もっと身近な例を挙げれば、家族旅行を計画していて、

親たちはキャンプに行きたい一方、子どもたちはディズニーランドに行きたい場合、

どちらにするか・・・

 

このような「あちらを立てればこちらが立たず」といった

ジレンマの問題も「ゲームの理論」の分析の対象になります。

 

「ゲームの理論」と経済学の相性は良く、

仮想通貨をより深く理解するためには是非知っておいていただければと思います。

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